経営者は従業員の副業を認めるべきか
- 隣の芝生は案外青くない
- 終身雇用だと、一つの企業文化しか知らずに終わる
- 終身雇用制度が根強く残ってきた理由
- どんな副業を始めたら良いか
- 「副業解禁」は「副業義務化」ではない
- 逆の立場を経験させることで組織内の関係性も変わる
- インスタイルグループは、副業と専業のどちらが多い?
読むポッドキャスト 第89回「西村豪庸の『社長工場』」
ナレーターやまだひさし
「西村豪庸(にしむらひでのぶ)の『社長工場』」!!
こんにちは、やまだひさしです!
ポッドキャスト番組、西村豪庸の社長工場では、インスタイルグループの代表を務める経営コンサルタントの西村豪庸さんが、ビジネス、経営に関することを独自の視点で解説していきます。
西村さん本日もよろしくお願いします。
工場長西村豪庸
お願いします。
ナレーターやまだひさし
本日のテーマは「副業」です。
2018年1月、政府は働き方改革の一環として、モデル就業規則から「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」の規定を削除し、副業や兼業が解禁されました。
まだ多くの企業が副業に対して否定的な意見を持っているようですが、ソフトバンクやみずほフィナンシャルグループ、リクルート、アサヒビールなどの有名企業も副業を解禁しています。
副業を解禁した企業は、社員が他の仕事をしたくなったり仕事への関心をなくすと、転職してしまう可能性があるので、副業を認めることで人材流出を防ぐという狙いがあるそうなんですが、これは実際に効果があるんでしょうか?
工場長西村豪庸
昔から僕は、コンサル先のベンチャー企業の社員に「1回、外の釜の飯を食っておいで」って言うときがあるんですよ。
ナレーターやまだひさし
実際に、そういうコンサルをしたこともあるんですか?
工場長西村豪庸
全然あります。
隣の芝生は案外青くない
工場長西村豪庸
隣の芝生って、青く見えるじゃないですか。
そのときに「隣の家に行ってごらん、案外青くねえから」と言ったりするんですよ。
副業が解禁されたのって、ちょっとお試しで週末起業じゃないけど、週末副業をしてみて
「こんなもんなんだね。
やっぱり、うちの会社のほうがいいな」
と思ってもらうのを狙って、解禁してるってことですよね?
ナレーターやまだひさし
そうです。
これって、効果はあるんですか?
工場長西村豪庸
自分の会社がいい会社っていう自信があるなら「どんどん外を見ておいでよ、そんなものだから」と言えると思うし、会社によると思いますよ。
ナレーターやまだひさし
インスタイルグループはさまざまな業態があって、いつでも覗いて見ればいいから、転職も副業もないですよね。
「僕、今の事業やめてエンタメやりたいんですよ」
「飲食をやりたいんですよ」
ってなったら
「そういう会社もあるし、行ってみたら?」
となるんでしょうし。
工場長西村豪庸
ある程度自信はあるので、転職も副業も別にオッケーですけどね。
ベストマッチじゃないけど、どこかでハマることもありえるから、3〜4社くらいは、はしごしてたり掛け持ちしているやつとか全然いますね。
ナレーターやまだひさし
それによって、才能が開花する場合もあるからね。
工場長西村豪庸
よく「ウナギと梅干しは別にどっちも悪くない」って言いますけど、別に食い合わせが悪いだけなら、良い食い合わせになるまで試すのもアリだと思うんです。
終身雇用だと、一つの企業文化しか知らずに終わる
工場長西村豪庸
終身雇用の時代は簡単に転職ができないから、自分が本当にその会社に向いてるのかすら、分からずにいるケースが多かったと思うんです。
昔からそうですけど、家庭も会社も、だいたい一つか二つしか知らないじゃないですか。
100世帯くらい家庭を見たやつなんていないから、幸せな結婚生活ってどんなものなのかを考えたときって、両親の結婚生活ぐらいしか思い浮かばないんですよ。
ナレーターやまだひさし
普通はね。
家だって、本当は3回ぐらい建てないと理想の家にはならないって言いますけど、だいたいの人は1戸しか建てないじゃないですか。
工場長西村豪庸
家でさえ3回くらい建てなきゃ理想通りにならないのなら、家族や、社員関係で言ったら、もっと見なきゃいけないじゃないですか。
だけど終身雇用だと、残念ながら一つの企業文化しか知らないままで終わるんですよ。
塩ラーメンしか食ったことねえのに「人生で一番好きなラーメン決めろ」って言われてるようなものですから、難しいですよね。
「世の中には、豚骨ラーメンやみそラーメンってものがあるよ?」みたいな。
ナレーターやまだひさし
そもそも、みそラーメンの存在すらも知らないってことですもんね。
工場長西村豪庸
塩ラーメンの家庭に育っちゃってるから、知らないんですよ。
ナレーターやまだひさし
ほぼ知らないで終わっていくというのが、今までのケースだったわけですね。
終身雇用制度が根強く残ってきた理由
ナレーターやまだひさし
日本は、ずいぶん頑なに終身雇用制度が続いていた気がしているんですが、僕らがガラパゴスだったんですか?
それとも、意外と世界でも元々はそうだったんですかね?
工場長西村豪庸
日本の終身雇用制度って高度経済成長の神話の一つなんで、そんな大した歴史はないんだけど、強烈な成功体験だったのですごい強いんですよね。
ナレーターやまだひさし
それをちゃんと守ってきたおかげで、アジアで1番になれた背景があるからね。
工場長西村豪庸
高度経済成長の前は、自営業や借家暮らしの方がはるかに多かったし、本当に一瞬の話なんですけどね。
20〜30年のうちのただの神話なんだけど、すごい成功したプロパガンダの一つですよね。
ナレーターやまだひさし
それが突然フォーカスされて、成功例がすり込まれたことで経済大国になったけど、変革がこれだけ著しい世界にいたら続けられないし、今はもう違うんですよね。
工場長西村豪庸
どっちかというと、副業解禁というほうが、昔っぽいんですよね。
ナレーターやまだひさし
よろず屋じゃないけど、本来はそれぞれが分担をしてワークシェアをした方がムダがないですから、今後はその形に戻っていきそうですよね。
工場長西村豪庸
副業解禁の目的は、二つの側面があると思うんです。
一つは人材流出を防ぐ目的、もう一つは終身雇用制度が神話だったことに気が付いて
「終身雇用も年金もあれもこれも、さすがにちょっときついから、ごめんけど自分の面倒は自分で見てくれ」
って、責任を自身に負わせるようにシフトしているんじゃないですか。
だから、企業側も
「国もそう言っているから、俺らも当然自己責任と言っていいよね」
「会社でがっつり縛らないし、好きにしていいから、代わりにお前の老後の面倒は見ない」
っていうスタンスになっているんだと思いますよ。
ナレーターやまだひさし
そういうところまで、きちゃってるんでしょうね。
ソフトバンクの人が、ドコモやauで副業をしたり、同業他社では副業させてないですよね?
工場長西村豪庸
それだとスパイになっちゃいますから、さすがにしてないですよね。
ナレーターやまだひさし
僕は、それぐらいやったらもっとこの国は変わると思っているんです。
アサヒビールの社長が、社員をサントリーとかサッポロにも副業させたら、相当キレッキレの社長だなと思うんですけどね。
工場長西村豪庸
めちゃめちゃ面白いですけどね。
どんな副業を始めたら良いか
ナレーターやまだひさし
ヒデちゃんは、バーテンダーとして働きはじめたお店でコンサルのようなことをしていて、それがみんなに注目されて仕事としてスタートしたんですよね。
工場長西村豪庸
そうですね。
ナレーターやまだひさし
当時は副業とは思っていなかっただろうけど、結果的にコンサルの仕事が副業みたいなもんだったんですよね。
副業をしようと思って探している人にアドバイスをするなら、どんなアドバイスをしますか?
工場長西村豪庸
副業と思って副業を探さず、本業にできると思う副業を探すように言いますね。
ナレーターやまだひさし
副業って思うと「副業だから、儲からなくて良いんだ」みたいに逃げちゃうところもありますからね。
工場長西村豪庸
知識、技術、経験を手に入れるための副業なのか、お金を手に入れるための副業なのか、どっちにしたって本業だって思えるぐらいの覚悟を持ってやらないといけないですよね。
「月に5万円の副収入があったら良くない?」くらいのライトな感じでやっていて、本当に月に5万円の副収入を得ているやつがたくさんいたら、日本はもうちょっと豊かになっていますから。
ナレーターやまだひさし
そんなに豊かになっていないですもんね。
ナレーターやまだひさし
そのぐらいの覚悟でやらない限りは、両方面白くはならないよってことですよね。
「副業解禁」は「副業義務化」ではない
ナレーターやまだひさし
たまに「副業を全力でやり始めたら、本業で眠い顔をするようになって、なんか副業のほうがウエート多くない?」みたいな人いませんか?
工場長西村豪庸
それこそ、副業の方を本業にさせればいいんじゃないですか?
自己管理できるやつは、どこまで行ってもちゃんと本業にも影響させないし、できないやつは副業をしてなくたって、どうせ飲みに出て眠そうな顔をしてるし、結局は人次第なんですよ。
ナレーターやまだひさし
それも向き不向きがありますから、全員に副業を勧めてもダメかもしれませんね。
工場長西村豪庸
もちろん
「本業に集中してくれたら、月に3万円、5万円の小遣いくらい、給料で上乗せしてやれるのに」
と社長が思うんだったら、社員に対して自信満々に言えばいいんじゃないですか?
でも
「私は毎週金曜日に銀座でホステスをやって、1日3万円、月に12万円稼ぎたいので、この副業を認めてくれないと困るんです」
って言われたとしたら
「本業に集中してくれても、月に12万円は増やせねえな…」
てなるじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
単にお金のためだけに、副業をしたい場合もありますしね。
副業する目的が、経験値だったり違うネットワークが欲しいという目的だったら、話は別ですもんね。
工場長西村豪庸
副業が解禁されたときって、世の中すごい盛り上がって「副業しなきゃいけない」みたいなムードになったじゃないですか。
許されてなかったことが許されただけだから、別に全員行かなきゃいけないわけじゃないのに
「お前その勢いだと、アユ釣りが解禁されたときにアユ釣りに行かなきゃいけねえぞ」
みたいな。
ナレーターやまだひさし
確かに。
解禁しただけだから、別に全員行けってわけじゃないのにね。
工場長西村豪庸
禁止されたのが解かれたみたいな、すごいカタルシスを感じるあの言葉はうまいですよね。
「大丈夫、解禁!」ってなったら「よっしゃ、やんなきゃ!」ってなりますよね。
ナレーターやまだひさし
でも、副業がすべてではないですから、よく考えたほうがいいですね。
工場長西村豪庸
そうそう。
副業義務化じゃないんでね。
興味がある人はアユ釣り行くだろうけど、興味ない人は行かないじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
もしかしたら、副業で得ようとしていたものが本業で得られるかもしれないしね。
逆の立場を経験させることで組織内の関係性も変わる
工場長西村豪庸
俺が飲食店でアルバイトとかサポートで入っているときから、キッチンのやつにはホールを、ホールのやつにはキッチンをやらせるって、自分で課してたんですよ。
ナレーターやまだひさし
お互いに見てみないと分からないものが、絶対ありますもんね。
工場長西村豪庸
キッチンのやつはホールをやらせないと、お客さんのニーズ・ウォンツも分からないし、逆にホールのやつはキッチンをやらせないと、オーダーをまとめてくれないと何が大変なのかが分からない。
両方の立場を経験することで、どっちもそうはいかない部分と、こうしてくれたらいいのにという部分が分かるじゃないですか。
逆側の気持ちにならないと分からないことがあるので、必ず逆の立場に立たせてたんですよ。
ナレーターやまだひさし
僕で言うと、ちょっとADに生放送をさせてみるということですか。
工場長西村豪庸
喋らせてみて、その間やまださんはADですよ 笑
ナレーターやまだひさし
うわぁ、どこに何のCDがあるか、全然知らねえ 笑
そのくせ「なんであの曲探せねえんだよ、ばか」って言ってますし、この規模感でさえ、そうなるんだもんね。
それをちょっとでも分かってくれる経営者や、分かってくれる社員がいたら、そういう言葉遣いにはならなかったり、サービスの仕方が変わってきたりしますから、大事ですね。
組織の中で、そういう風通しの良い関係性を作るだけでも、変わってくるんですね。
インスタイルグループは、副業と専業のどちらが多い?
ナレーターやまだひさし
インスタイルグループは副業している人と専業の人、どちらの方が多いですか?
工場長西村豪庸
基本は専業ですね。
社長たちは、だいたい2、3社の社長をやっていたりするんで、副業というより兼業ですね。
ナレーターやまだひさし
それは、意図的に複数の会社の社長をやらせているんですか?
工場長西村豪庸
僕が5社も10社も20社も30社も社長をやってたから「おめえらもできんべ」って思ってるんですよね。
ナレーターやまだひさし
すごいな。
僕もインスタイルグループにいますけど「やまちゃんさ、あそこの会社の社長やって」とか、いきなりそんなことを言われる日がくるんですかね?
工場長西村豪庸
言ってよければ、言いますよ。
ナレーターやまだひさし
ちょっと待ってください 笑
ということは、ラジオDJではなく、僕に合いそうな仕事がもう一つあったりするんですか?
工場長西村豪庸
あったとして、月に5万円の副収入があったら人生変わらない?笑
工場長西村豪庸
笑
やまペイじゃなくて、5、6年前から言ってる電器屋の社長の方ね 笑
ナレーターやまだひさし
電器に詳しいやまだが、在庫一切抱えず、結果ヤマダ電機に連れて行くっていうやまだ電機でしょう?笑
会社名を平仮名にしただけだから、ぶつかり合いしか考えられない 笑
工場長西村豪庸
それか、太陽光を売るんでしょ。
ナレーターやまだひさし
やまだ電気も言ってたね。
こっちは発電するほうだって言って、電気の大元を売るって話もしてたな。
工場長西村豪庸
それでもダメだったら、偉い人の話いっぱい聞いて本にして、やまだ伝記を出版したらいいですよ 笑
工場長西村豪庸
ありがとうございました。