福利厚生は無駄なものなのか
- 福利厚生は無駄なものなのか
- 福利厚生によって出てくるものとは
- 効率化すべきものと、残すべきものの見分け方
- この会社に所属したいと思われるために、社長ができること
- コロナウイルスの流行は、社員との関係性を見直すいい機会
読むポッドキャスト 第103回「西村豪庸の『社長工場』」
ナレーターやまだひさし
「西村豪庸(にしむらひでのぶ)の『社長工場』」!!
こんにちは、やまだひさしです!
ポッドキャスト番組、西村豪庸の社長工場では、インスタイルグループの代表を務める経営コンサルタントの西村豪庸さんが、ビジネス、経営に関することを独自の視点で解説していきます。
西村さん本日もよろしくお願いします。
工場長西村豪庸
お願いします。
ナレーターやまだひさし
今日のテーマは「福利厚生」です。
コロナウイルスの流行に伴い、リモートワークが推進され、いろんな形で会社の働き方も変わってきて
「効率が良くなった」
「無駄がなくなった」
と言われていますが、そうなってきた今、福利厚生って見直さなきゃいけない時期にきている気がするんです。
工場長西村豪庸
この間もテレワークの回でちょっと話したけど、総務がいないからWi-Fiに問題があっても、コピー用紙が切れても自分で解決しなきゃいけないし、コーヒーマシンもウォーターサーバーも全部自分で手配しなきゃいけなくなるじゃないですか。
その代わりと言っちゃなんだけど、家をちゃんと整えて仕事ができる環境にすれば、通勤する必要もなくなって効率的になるし、結局はどこまでステ振りするかじゃないですか?
極論、オフィス代の代わりに通勤手当として、社員全員に月5万円ずつ払っている方が安く済む場合もあるじゃないですか。
僕は100人で月1000万円のオフィスを借りるくらいだったら、社員一人一人に毎月5万円払ってる方が、月500万円で済むし、お互いハッピーだと思っている方なので。
ナレーターやまだひさし
確かに、効率や無駄がないようにって考えたらそうなりますよね。
福利厚生も、例えば今までは社員でハワイ旅行に行っていたけど
「旅行代を現金化して、それを振り込めばいいんじゃないか?」
ともなりかねませんし、果たしてそれは福利厚生って言うのか? となってきますしね。
工場長西村豪庸
ていうか、社員旅行とかで海外にはいつ行けるんですかね。
ナレーターやまだひさし
ビジネスで行くならまだしも、観光目的では当分行けないですよね。
工場長西村豪庸
社員旅行に1週間行くために、まず旅行先で2週間拘束されて、帰ってきて日本で2週間拘束されて、計5週間、1ヶ月ちょい拘束されるじゃないですか。
僕の香港出張がまだ再開できてないのは、今後
「ビジネスだったら、全然来ていいよ」
っていうときがきたとしても
「でも行き先か日本のどちらかで、2週間は拘束されるよ」
ってなったら、1週間のビジネスするために3週間必要になるわけじゃないですか。
ビフォアコロナのときみたいに、ひょいひょい行って1週間働いてパッと帰ってくるみたいなことは、物理的に不可能なんですよね。
ナレーターやまだひさし
「さっきまで、香港いたんですよ」みたいな感じで、ミーティングができないってことですもんね。
工場長西村豪庸
多分、無理ですよね。
「さっきまで、香港にいたんですよ」
「ピピーッ!」
って感じじゃないですか。
福利厚生は無駄なものなのか
ナレーターやまだひさし
インスタイルグループも、今までだったら当然ミーティングをしたり、福利厚生としてたまにイベントがあって、一見無駄に見えるかもしれない雑談の中で生まれる新しいアイデアとかに支えられてきたわけですよね。
工場長西村豪庸
そうですね。
そういうのがない会社とか仕事って、究極に効率的だけど「楽しいか?」って聞かれたら、別に楽しくないじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
こうやってヒデちゃんの話を聞いていると「会社をやってる意味あるかい?」ってなりそうですね。
工場長西村豪庸
そうなんですよね。
お金を儲けたいだけなんだったら、為替をいじくってりゃいいじゃないですか。
この間
「フットサルしようぜ!」
って社員に言われて、オープンエアのもとフットサルをしに行ったんですよ。
フットサルをしたからといって会社の業績にはあんまり関係ないけど、一緒にフットサルに行ける同僚が「なに、あいつ俺のこと大嫌いだったの?」ってなることって、なかなかないじゃないですか。
フットサルに限らず、社員旅行に行けるでも一緒に飯が食いに行けるでも、一緒に飲みに行けるでもなんでもいいんですけど。
結局、それぞれがうまく仕事をしているのは、ちゃんとコミュニケーションが取れていて、そこに変な誤解や含むものがないということが分かるからじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
そういったものも分かるから、福利厚生には意義があると思ってきてますからね。
福利厚生によって出てくるものとは
工場長西村豪庸
結局コミュニケーションだし、さっきやまださんが言ってたみたいに、雑談からアイデアが生まれてくると思うからやってるわけじゃないですか。
例えば昔、うちに毎日弁当屋さんに来てもらってたんですけど、その頼んでた弁当屋さんがビジネスをやめちゃったので、今度うちで弁当屋さんを作ろうと思ってるんです。
ナレーターやまだひさし
「こうなったら作ってしまえ!」ってことですか?
それもすごいな。
工場長西村豪庸
田舎の生活とインスタイルグループって、わりと共通するところがあって「ほしいものがなかったら、自分たちで作ればいいじゃない」は、インスタイルグループの癖なんです。
お弁当も、元々飲食業をやっていた僕が
「勤務時間中にまかないが出ないのは、なんかちょっと嫌だな」
って思ったところから始まったんですけど、弁当を社長同士、社員同士で何人かで食いながら
「こんなことがあってさ…」
みたいな、なんちゃない愚痴が出てきたり、やっぱり真実ってそこにあるんですよ。
例えば、やまださんと俺の2人で、時間を1時間って決めてZoom会議をやったとしたら、よく分からない愚痴とか多分お互いに言わないじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
確かに、仕事モードだから要件だけ伝えるでしょうね。
でも、会ってたら言う愚痴はありますよね。
工場長西村豪庸
全部を超効率化したいわけでもないし、全部を湿っぽい昭和のコミュニケーションを取りたいわけでもなくて
「飲みニケーション命!」
みたいなことを言いたいわけでもないんです。
でも「大したことじゃないんだけど…」みたいな、言うほどでもない愚痴って、わりと重要だったりするじゃないですか。
例えば、普通に同僚と弁当を食ってて
「社長に上げるまででもないけど、仕事上でなんかこれが気に入らない」
「社長に言うことでも上司に言うことでもないけど、最近これに困ってるよね」
みたいな話が、みんなで弁当食ってて毎回出るなら、それって実は問題じゃないですか。
「ほんとあのシステム使いづらいよね」
って話が毎回出るけど、Zoom会議で30分とか1時間くらい上長や社長に時間を取っていただいて
「あのシステムが使いづらいんでございます」
って言いたいほどでもないんですよ。
ナレーターやまだひさし
なるほど。
でも、それだとまた、ないがしろになっちゃうんだよな。
工場長西村豪庸
でも、会社やってるとそれって多いじゃないですか。
「西村くんのパソコンだけ、すごい遅いんですよ」みたいなことって、別に流せはするんですよ。
ナレーターやまだひさし
でも、そのままにしとくのは最終的には危険になるよね。
工場長西村豪庸
Slackとかチャットツールでつぶやくのはアリなのかもしれないけど「 "@社長" ってハイライトを付けて、ポストするほどのことでもないな」みたいな。
「西村くんのパソコンが、だいぶ古いんですけど…」
ってSlackがきても
「なんだ?」
ってなるし、日本人ってそういう民族じゃないですか。
ナレーターやまだひさし
変に遠慮したりね。
工場長西村豪庸
ちょっとお昼食べながらとか、フットサルだろうがゴルフだろうがバスケだろうが、やっているものは別に何だっていいんですよ。
それこそ、おつかれビールを飲みながら
「今日の西村くんの動きは、パソコンの動きと全然違って速かったね」
なんて言われた日には
「あいつのパソコンは、話題に出るほど遅いんだね」
ってなるじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
「分かった、直しとく」ってなりますね。
本当なら、そういうふうに建設的な意見がどんどん出てくる仕組みだったし、それが会社や企業や集団の良さだったりするから。
工場長西村豪庸
そうなんですよ。
世代観とか価値観とか含めて、それが合う人間と合わない人間はいるから、徹底的に効率化して
「隣の席にいても、Slackしなさいね」
「言った言わないもあるし、ちゃんと残さないといけないからね」
っていうルールの会社も俺は知ってるし、別にそれも悪いとは言わないけどね。
効率化すべきものと、残すべきものの見分け方
ナレーターやまだひさし
僕の周りでも、あるゴルフ場のグループのミーティングが全部Zoomになったらしいんですよ。
毎週、ゴルフ場に行ってミーティングしてたんですけど、ゴルフ場って土地がでかくて、郊外に点々とあるわけじゃないですか。
聞いたら、今までは行って戻ってきただけで1日潰れていたらしく、他のことが何もできなかったらしいんです。
もちろん、会ってミーティングすることも大事なんだけど、今までは毎週会っていたところを、月1くらいにしても別に良いんじゃないかとなったらしいです。
工場長西村豪庸
なんでもかんでも会わなきゃいけないわけじゃないしね。
僕もクライアントの上場企業に一人で行ったら15人ぐらい会議室にいて、そのうち13人ぐらい一言もしゃべらなくて
「怒られるのかな、俺?」
みたいなときがあるんです。
ナレーターやまだひさし
もう少し効率化を図って良い人もいるけど、逆に目覚めてほしい人たちもいっぱいいて、これは全てバランスですよね。
工場長西村豪庸
本当に、そうだと思うんですよ。
だから、何を大事にしたいかじゃないですか?
「仙豆(せんず)みたいなサプリができたら、究極的に効率的だからそのサプリを飲むのか?」
って聞かれたら
「ごめん、俺は食事を楽しみたいわ」
ってなるので。
でも、人によっては食事に全く興味がない人とかもいて、別にそれで栄養が摂れるんだったらそれでいいみたいな人だっているじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
いなくはないか。
工場長西村豪庸
僕の周りにも、2人ぐらいいるんです。
信じらんねーと思いますけど「食事とか、興味なくて…」みたいな、本当に仙豆があったら一生仙豆食ってるようなやつがいるんですよ。
ナレーターやまだひさし
でもやっぱり僕らは、どちらかと言ったらサプリよりは食事を選びたいし、食事の場で出会う人や発見に何かを見出したいと思ってますもんね。
工場長西村豪庸
俺らは下手な言い方したら、そういうタイプの古い人間なんですよ。
ナレーターやまだひさし
もしかしたら、僕らはとっくに旧人類なのかもしれないね。
福利厚生のことも
「売り上げも落ちていて、厳しい状態だからそんなことしてる場合じゃない!」
「そんなことにお金なんか投下できないよ!」
という会社もあると思うんです。
だけどその一方で、全部なくしていった先に何があるの? っていうところですよね。
工場長西村豪庸
そうなんですよ。
AIでもITでも、徹底的に効率化していった先に、AIに勝てるのか? っていう話ですよね。
この間話したAIに仕事を奪われるみたいな話じゃないけど、僕らが今さら電卓ではなくそろばんを使う必要がないのと一緒で、効率化しなきゃいけない部分と効率化してもしょうがない部分、どっちもあると思うんですよ。
そこはバランスを見てですよね。
この会社に所属したいと思われるために、社長ができること
工場長西村豪庸
でも結局、人がいないと会社なんて成り立たないわけで、国民が1人もいない状態で国王だって言ってる国、まあまあイタイじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
イタイですね。
工場長西村豪庸
いかに国民が活気をもって経済活動をすることによって税収が上がるかっていう話じゃないですか。
それと一緒で、国民が常に戦時下において疲弊してる状態で、パフォーマンスは発揮できるわけがないんです。
だから、結局
「この国は安心だよ」
「この場所は安全だよ」
って思われるところから始まって、そこに人がいっぱい集まって、経済が生まれて、ぐるぐる回っている状態を景気が良いと言い、あんまり回っていない状態を景気が悪いと言うじゃないですか。
だから、いかに良い感じの人がそこに集まれるか、良い感じの経済活動が行われるかというのがポイントなわけなんです。
「福利厚生などのプラスのもの、気持ちのいいもの、楽しいものを全部なくして、超効率的にしました」
っていう国なり、会社なり、コミュニティが
「所属したいとか、そこに行きたいと思われるかな?」
って言ったら
「隣町で商売した方が良いんじゃないの?」
ってなるじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
確かに。
工場長西村豪庸
もちろん、コロナによる明確化の通過儀礼みたいな良い儀式っていう側面はあるから分かるんですけど、ひたすら効率化して削っていった先に、何も答えはないと思うんです。
ナレーターやまだひさし
すごく効率化していくのも、もちろん良いんだけど、その先に何があるのかをちゃんと想像していった方が良いって話ですよね。
工場長西村豪庸
元々、このご時世に
「ファックスしかありません」
って言ってたような会社は、おおいに効率化してくれって話なんだけど "贅沢" "余裕" "無駄" って、全部違うじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
似たように言われているけど、違うね。
工場長西村豪庸
もちろんその国が存続していくために、今年は凶作だったから頑張ってもらわなきゃいけないとか、年貢は我慢してもらわなきゃいけないとか、それを言う国王がNGだとは言わないですけど、なかなか難しいですよね。
全部削っていった先に目的がないと、社員側も国民側も、ただ単に税金上げるからって言われたところで
「なぜ?」
「じゃあ隣町に行くよ」
ってなるじゃないですか。
結局、社長って隣のゲーム盤じゃなくて、こっちのゲーム盤の方が良いよって言い続ける努力をすることしかできないわけで、首根っこつかまえて、鎖で、縄つけて、縛りつけることはできないんです。
働きたくないやつに
「もっと働け!」
って言ったらブラックだし、すげー働きたいやつに
「うちは上場企業で、ホワイト企業だから6時で帰れ!」
って言ったらブラックだし、飲みニケーションがいっぱいあった方が良いってやつに
「SlackとZoomで、ひたすら効率化しろ!」
って言ったらそれはそれでブラックだし
「アフター5に、同僚と飲みになんか行きたくないよ…」
って言うやつに、飲みニケーションを強要してもブラックなんです。
結局、その人に合ってなかったらどっちにしたってブラックじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
確かに、線引きなんかできないんだよね。
工場長西村豪庸
だから、そこはバランスですよね。
コロナウイルスの流行は、社員との関係性を見直すいい機会
工場長西村豪庸
うちのグループ内では、少なくとも「フットサル行こうぜ!」って言ったら「行きましょうよ!」って言ってくれるやつらがいっぱいるみたいなんで、良いなと思うんですよ。
何度も言うけど、僕らは旧人類だから。
ナレーターやまだひさし
社員との関係性やバランスなどを見直す、ちょうど良い機会なのかもしれませんね。
コロナが流行る前って、そこまで確認が出来ていなかったところもあると思うんですよ。
工場長西村豪庸
そうなんですよ。
行きたくもない旅行に、とりあえず年1回2回行ってたのがなくなって「バンザイ!」って思ってる社員だって絶対にいるから、明確化の良いチャンスなんです。
ナレーターやまだひさし
それでも頑張って仕事をしてくれるなら、何か違う形でご褒美を与えるとか、そういうものができてもいいですよね。
工場長西村豪庸
社員旅行自体がない会社だってあるし、福利厚生も手厚い会社と薄い会社もあるし、方針も社長によって違うしね。
だから、社員側も社長側も選んで、相性の良い方をやったらいいと思うんですよ。
ナレーターやまだひさし
もっと言うと、福利厚生がなくても社員の満足度、幸福度が高い会社もあるかもしれないですからね。
工場長西村豪庸
出始めのDELLのパソコンみたいに「余計なものが何もついてないからまじ楽だし、その代わりに安いんだよね」みたいなね。
工場長西村豪庸
ありがとうございました。