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第91回「稟議書」

作成に時間のかかる稟議書は本当に必要か

    トピックス一覧
  1. 稟議書とはどういうものなのか
  2. 稟議書を無くしたくても、会社や上司の考えは簡単には変わらない
  3. インスタイルグループは、稟議書に代わるITツールを導入している
  4. 社長命令だとしても、稟議書が必要な理由
  5. 稟議書はいくらでも簡易化できる

読むポッドキャスト 第91回「西村豪庸の『社長工場』」

ナレーターやまだひさし

「西村豪庸(にしむらひでのぶ)の『社長工場』」!!

こんにちは、やまだひさしです!
ポッドキャスト番組、西村豪庸の社長工場では、インスタイルグループの代表を務める経営コンサルタントの西村豪庸さんが、ビジネス、経営に関することを独自の視点で解説していきます。

西村さん本日もよろしくお願いします。

工場長西村豪庸

お願いします。

ナレーターやまだひさし

本日のテーマは「稟議書」です。

今回は、リスナーの方からお便りをいただいたので、ご紹介します。

---(リスナーからのお便り)

西村さん、やまださんこんにちは。
いつも勉強させていただいてます。
ぜひとも社長工場で、稟議書について取り扱っていただけないでしょうか。

現在、中間管理職の私は、グループ全体で約60名ほどの中小企業に努めております。
私が努めている会社では、会社命令の業務でも稟議書が発生することがあります。

例えば、

・会社案内の作成
・社員全員分の作業服の購入
・展示会への参加
・期首に行う全グループ会社が集まるイベントなど

会社から「やれ」と言われた業務において、なぜこちらからお願いするような稟議書を書かなければいけないのか、ずっと疑問でしょうがありません。
私は、上記のような案件の稟議書を作成する時間が無駄としか思えなく、今すぐ無くしたいと考えております。

西村さんが経営するインスタイルグループでは、稟議書はどのように使用していますか?

補足事項としまして、稟議書作成は慣れていても30分はかかります。
役職によって決済金額が決められていますが、結局はどの案件も取締役以上まで上がるため、裁量を与えられてはおりません。
金額によっては幹部会で稟議内容をプレゼンしなきゃいけない場合もあります。」

---

とのことです。

ラジオDJの仕事をしていると、始末書はよく書くんですが稟議書を書くことがないので、僕自身が稟議書のちゃんとした意味を全然分かっていないんですが、どういったものなのでしょうか?

工場長西村豪庸

ちなみに始末書は、慣れてくると何分で書けるんですか?

ナレーターやまだひさし

テンプレがあるので、コピペしてサインするだけです。
今やもう、僕の筆跡をそのまま書けるADがいっぱいいるから…て、言わせるな!笑

工場長西村豪庸

稟議書とはどういうものなのか

ナレーターやまだひさし

まず、稟議書ついて教えてもらっていいですか?

例えば社員が、自分の店のテーブルや椅子を買い替えたいっていうときに

「社長、僕のレストランの椅子とテーブルを、買い替えていいですか?」

って書くのが稟議書ですか?

工場長西村豪庸

それで合っているんじゃないですか?

ググったら、衝撃の事実が出てきました。

ナレーターやまだひさし

どんなん出ました?

工場長西村豪庸

稟議書(ひんぎしょ)とは、稟議(ひんぎ)のために作られる文書のことである。

ナレーターやまだひさし

稟議書(りんぎしょ)じゃないの?

工場長西村豪庸

稟議書(りんぎしょ)は慣用読みで、正式名称は稟議書(ひんぎしょ)らしいっす。

ナレーターやまだひさし

知らなかった。
勉強になりますね。

工場長西村豪庸

とりあえず今回は、慣用読みで話しましょう。

「稟議書とは、稟議を行うための文書である。
稟議とは、会社、官庁などの組織において、会議の開催により消費する時間を減らすため、担当者が簡易案件を作成して関係者に回し、それぞれに同意のための捺印と承認を求めることを言う」
らしいです。

ナレーターやまだひさし

例えば、先程のケースで言うと

「なんで椅子やテーブルがいるのか?」
「今あるものは使えないのか?」


って話をしていると、議論が長くなっちゃうし面倒だから、簡潔にして時間を短縮するために作成するものなんですね。

工場長西村豪庸

ものを買うことに限らずですけど、きっといちいち会議を開いたりするのが面倒臭いからでしょうね。

ナレーターやまだひさし

質問をくれたリスナーの方は、稟議書を作るのに30分かかってますけど 笑

工場長西村豪庸

たぶん、会議を開いて決めると1時間かかるんだよ。

そもそもこの人が納得いかないことは、会社に命令された業務をなぜか稟議書にして上げなきゃいけないことでしょ?

ナレーターやまだひさし

つまり、ヒデちゃんが社員に「レストランの机と椅子がボロいから、買うための稟議書を書いといて」って言う状況ですよね。

工場長西村豪庸

もしくは将軍が、一兵卒に

「あいつのこと、撃ってぶち殺しとけ」

って命令して、今度は一兵卒が部隊長に

「すいません、あいつを撃ってぶち殺してよろしいでしょうか?」

って言う確認をして、ハンコをもらってから撃つ、みたいな状況ですよね。

ナレーターやまだひさし

たぶんそいつ、もう逃げてますよ 笑
なんか、面倒くさいやりとりですね。

こういう会社って、結構あるんですか?

工場長西村豪庸

あります。
ライブドアを経営しているときの堀江さんも、お金が入ってくることに関しては許可なしでOKだけど、お金が出ていくことに関しては、ペンを1本買うのでも許可制にしてたらしいですね。

稟議書を無くしたくても、会社や上司の考えは簡単には変わらない

工場長西村豪庸

この方は「役職によって決済金額が決められてるけど、どの案件も結局は取締役以上まで上がるため、裁量を与えられていない」んですよね?
そこが問題かなと思うんです。

ナレーターやまだひさし

だとすると、なんでこの人に稟議書書かせるんだって話になりますからね。

工場長西村豪庸

だから、結論は「その会社辞めなはれ」なんだよね。

稟議書を作成する時間が無駄としか思えなく、今すぐ無くしたいと考えているんでしょ?
「無駄としか思えなく」は正解なんだけど、問題はそのあとの「今すぐ無くしたい」です。
社長とか取締役だったら別に無くせばいいんだけど、自分が社員だから言うことを聞いている状況で、たぶんそこに納得いってないんですよね?

ナレーターやまだひさし

職業選択は自由だからね。

工場長西村豪庸

そうそう。
上司とか会社って、意外と変わってくれないし、あえて言うと、それでいいと思ってるからこんな馬鹿なことやってるんですから。

ナレーターやまだひさし

こういうことを言ってくれる人が、何十人もいるなら変えられると思うけど、この無駄に気付いちゃったのがあなたしか居ないのであれば、この会社は変わらないよね。

インスタイルグループは、稟議書に代わるITツールを導入している

工場長西村豪庸

インスタイルグループでは、稟議書じゃないけどRedmineっていうITツールを入れてます。

赤字企業で、立て直してる途中の会社は「これにお金を使っていいですか?」っていう確認を、僕にRedmineで上げてきますね。

赤字の会社にお金を貸すときって、どの会社からお金を貸すにせよ、結局は俺の会社で、俺の金が出てってるわけなんで

「1000万円の赤字が出たから、その1000万円を俺が埋めなきゃいけない」

っていう決済を、俺が知らないところでやられたくないんです。

5000万円、1億円の赤字を出すのであれば

「これにお金を使っていいですか」

って、俺に言って

「いいよ」

って言われてから使えよって話じゃないですか。

ナレーターやまだひさし

インスタイルグループでは、稟議書っていうものは無いけれど、常に情報を把握する手段があるわけですね。

工場長西村豪庸

月次決算も明細も見てるから、何にいくら使ってるかは分かってますし、それぞれの社長に権限を渡してるところは別に細かくは見ないけど、赤字の会社は特に細かく見るから「いいよ」とか「悪いよ」とかは言いますしね。

ナレーターやまだひさし

質問をくれたリスナーの方の会社は、その状況把握ができない場合は、稟議書を作らざるを得ないんでしょうね。

工場長西村豪庸

「ペン買っていいですか」
「水買っていいですか」


とか、いちいち聞かれたくないじゃないですか。

うちは、お小遣い制じゃないけど

「月にいくらぐらいまでは、雑費に使っていいよ」
「月に1万円とか2万円の携帯代は、許してあげる」


っていう裁量を与えてるんです。

ナレーターやまだひさし

こっちの時間も食っちゃうし、煩雑にならないためにも、別に確認はいらないと。

工場長西村豪庸

買ってきた会社だと意味分かんないことをされることもあるから、僕が最初から育てた会社か、作った会社か、買ってきた会社かにもよるんですけど、例えば月に300万円までの赤字は想定済みの会社で

「月300万円までは入れてやるから、そのなかでのやりくりだったら知ったこっちゃないけど、そこを出るようだったら稟議を持ってこい」

って言うのは分かるんです。

それをいちいち、まだ300万円の赤字だからって

「ペン買っていいですか」
「水買っていいですか」


って言われても

「うるせえな」

ってなるじゃないですか。

逆に、300万円の黒字の会社に対して「月に300万円の黒字だったら、200万円は俺がピンハネしていくけど、100万円までは好きに使っていいよ」みたいなこともできるわけです。

ナレーターやまだひさし

そういうやり方もあるんですね。

工場長西村豪庸

俺は面倒くさいので、本社の人間には会社のカードを持たせて、Suicaに3万円くらいまでのチャージは許可して

「交通費に使おうが、隣に住んでいて交通費がかからないから全部コンビニで使おうが、それは勝手にしなさいよ」

って言っているんです。

すげえ遠くに住んでるやつに

「新幹線通勤だから、11万円ください」

とか言われるのも、近くに住んでるやつに住宅手当を出すのも、それは個人の選択だから、僕には意味が分かんないんです。

3万円のSuica代を出して、遠くに住んでて交通費で消えちゃっても、住宅手当を貰えるわけじゃないけど、近くに住んでSuicaを生活費として使うのも、それはお前の選択じゃない? っていう話じゃないですか。

ナレーターやまだひさし

近くに来るなら来ればいいし、あとは自分で考えてくれと。

工場長西村豪庸

それが俺なりの公平、公正で、俺が与えてる権限なんです。

ナレーターやまだひさし

だから、そこに稟議はいらないんだね。

工場長西村豪庸

結局、責任と権限を渡すのは

「その代わり、ここまでの責任は果たしてね」
「その代わり、ここまで自己判断できるでしょ」


って言って、楽にするためだし、逆に言えば、判断できない状況とか、判断したらミスる状態で、自己判断させないためでもあるんです。

「月に10万円までは好きにしていいよ」って言うのは、最悪ミスられても月に10万円で済むし「月に10万円までだったら自由に失敗していいよ」って意味でもあります。

ナレーターやまだひさし

僕は、そっちの方がいいな。
試されてる感じもあるし、ある程度の信用も得てるっていう前提がある気がするんです。
中間管理職にもなって、未だに裁量を与えられていないってのは、信頼されてるような気がしないですよね。

工場長西村豪庸

どの案件も結局は取締役以上まで上がるんだったら意味ないし、会社としてシステムが間違ってるよね。

社長命令だとしても、稟議書が必要な理由

工場長西村豪庸

だけど、全員が適当にやるようになったら組織として成り立たないから、どうしても会社の幹部の立場に立つと、きちんとオペレーションを組んで、日々のレギュレーションから離れないようにしなきゃいけないんですよね。

例えばですけど「社長命令だったんで、稟議書なしでやりました」って言われても、その行動が本当に社長命令だったのか分かんないじゃないですか。

ナレーターやまだひさし

裏とりもできないし、聞き間違いの可能性もあるからね。

工場長西村豪庸

「社長命令なんで」とか「誰々さんの決裁下りてるんで」って言われたら、どうしようもなくなっちゃうっていう場合を考える会社もあるわけです。

だから、そこまでの責任を取らせないためでもあるんですよね。
30分かかる稟議書である必要はないと思いますけど、本当に会社の命令だったのかどうかを、確認するために書かせているんでしょうね。

ナレーターやまだひさし

今は、チャットツールでも残すことはできますしね。
確かに、旧態依然とした会社とかだったらあるかもね。

工場長西村豪庸

旧態依然としてない、僕のクライアントとかでもよくありますよ。
クライアント企業にコンサルタントとして入っていくときって、僕は決裁権者としか話さないから、基本的には偉い立場になるじゃないですか。

それを社員も分かってて「ヒデさんの決裁もらってるんで」って言って、話進めちゃうやつとか、マジでいるんです。

大きい会社の仕事に慣れてきちゃった、まあまあ営業できるやつとかだと、それで簡単に億単位の広告とか作っちゃったりするんです。

ナレーターやまだひさし

それをやられたら、どうしようもないね 笑

工場長西村豪庸

別にチャットでも、同報メールでも、なんでもいいけど

「俺が『そんなの許可してねえから』って言えない環境で『決裁もらってるんで、社長これ進めていいっすか』って言うのやめてもらっていい?」

って言ってる会社、5社10社ありますからね。

稟議書はいくらでも簡易化できる

ナレーターやまだひさし

勉強になりました。
きっと稟議書は、無くなりはしないものなんでしょうね。

工場長西村豪庸

今の時代、IT化が進んでるから、いくらでも簡易化、自動化することは全然できますから。

ナレーターやまだひさし

今だと、自分で書く必要はもちろんないと思うし、チャットみたいなものに上げて、記録を残すこともできなくはないからね。

書くのに30分かかる稟議書が、せめてもう少し時間が短縮できたりすると、この人のストレスも無くなるかもしれないですね。

工場長西村豪庸

それを受け入れる会社かどうかは知らんけど、ITツールを導入して、1分でも2分でも短縮できればいいと思いますけどね。

ナレーターやまだひさし

もし、この人が会社を辞めたくなくて、稟議書を今すぐ無くしたいと考えているんだったら、まずはITツールを導入することを提案するといいかもね。

工場長西村豪庸

たぶん「稟議書作成における業務効率化について」っていう稟議書を書くんですよね。

ナレーターやまだひさし

マトリョーシカみたいになってきた 笑
でも頑張って、それが最後の稟議書になることを祈ります。

ちなみにヒデちゃんは、始末書を書いたことはありますか?

工場長西村豪庸

あります。
西麻布のレストランのバーテンダーをやっていたときに、ある大物のパーティーがあったんですけど、シェフがシャンパングラスを200個ぐらい割ったんです。

ほんで「西村、始末書を書かなきゃいけないんだけど、書いといてくれ」って言われて、書きましたね。

ナレーターやまだひさし

それ、ヒデちゃんのミスじゃないじゃん 笑

工場長西村豪庸

「だってお前バーテンダーだろ」

って言われて

「確かにこのグラスはバーのグラスだし、ソムリエの俺の仕事道具だけど、それを割ったのはおめえだわ」

と思いながら、書いたね 笑

ナレーターやまだひさし

いい経験してんな 笑
結局、それは始末書で済んだんですか?

工場長西村豪庸

始末書で済みました。
そもそも俺のせいじゃないし、わざとじゃないし 笑

ナレーターやまだひさし

泣けてくるわ。

みなさんは、始末書の書き方は覚えてなくて大丈夫です。
稟議書の書き方、是非覚えておいてください。

「西村豪庸の『社長工場』」
「毎週1000万投資」と題しまして、情熱を持った起業家へエンジェル投資も行なっております。

エンジェル投資の詳細は第7回第8回の放送をお聞きください。

また、番組への質問・ご意見は下記のお問い合わせフォームからお問い合わせください。

西村さん本日もありがとうございました。

工場長西村豪庸

ありがとうございました。

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