経営者のための万引き対策
読むポッドキャスト 第80回「西村豪庸の『社長工場』」
- コストをかけずに、万引きを減らすことはできるのか
- 万引き率は、接客の良さに反比例する
- 食い逃げを防止するには
- リアル店舗を「広告費」と割り切っているお店
- 備品の盗難にはどのように対処するべきか
- 中間価格帯のお店は、万引き対策が難しい
ナレーターやまだひさし
「西村豪庸(にしむらひでのぶ)の『社長工場』」!!
こんにちは、やまだひさしです!
ポッドキャスト番組、西村豪庸の社長工場では、インスタイルグループの代表を務める経営コンサルタントの西村豪庸さんが、ビジネス、経営に関することを独自の視点で解説していきます。
西村さん本日もよろしくお願いします。
工場長西村豪庸
お願いします。
ナレーターやまだひさし
今日のテーマは「万引き」でございます。
日本の万引きの年間被害額は、およそ4500億円以上と言われており、万引きが原因で閉店に追い込まれる「万引き倒産」も珍しくありません。
特に、深刻な被害に遭っている本屋を例にあげると、本屋の利益率は約2割と非常に低いので、仮に1000円の本が1冊万引きされると、被害額を取り返すには5冊の本を売らないといけない計算になります。
実際には、家賃や人件費などの販管費もかかってきますので、1冊の本を万引きされると、50冊ぐらい売らないと赤字になってしまうそうです。
これまでの万引きのイメージは、非行少年の軽犯罪という印象でしたが、最近では未成年よりも高齢者による万引きの件数が多くなっていて、
外国人窃盗グループによる犯行や、スリルを求めて衝動的に窃盗を繰り返してしまう『クレプトマニア』という精神障害まで出てきており、小売店経営において、万引きは死活問題になっています。
今回は「経営者は、万引きにどのように対処すればいいのか」を、ヒデちゃんに聞いていきたいなと思います。
工場長西村豪庸
わかりました。
コストをかけずに、万引きを減らすことはできるのか
ナレーターやまだひさし
通常、万引き被害に遭ったら盗難届を警察に出すと思うんですけど、店舗の人員不足なども影響して実際は難しいようです。
盗難届を出すと、警察による現場検証や事情聴取があるので、その分時間もかかりますし、犯人が捕まらなかったことを考えると、結局泣き寝入りしてしまうケースが多いんだそうで、
盗難保険に加入するにしても防犯設備をつけるにしても、それなりにお金がかかるでしょうし、目に見える防犯対策は、お客さん側からの印象もあまり良いものではありませんしね。
コストをかけずに万引きを減らすことって、できないんでしょうか?
工場長西村豪庸
コストをかけずに、万引きを減らしたい気持ちはわかるんですけど、厳密に言うと「コストをかけずに」っていうのは無理なんですよ。
ナレーターやまだひさし
やっぱり、どうしてもコストはかかっちゃうものなんですね。
工場長西村豪庸
どのコストが一番効率的に万引きを減らせるかが重要なんです。
防犯設備にコストをかけるのか、人件費にコストをかけるのか、保険に加入して被害をカバーするのか、お店によって対策が変わるんですよね。
万引き対策をしまくるようになると、今度はお店の雰囲気が悪くなって売上が下がるので、コストの考え方はすごく難しいんです。
ナレーターやまだひさし
あんまり、がんじがらめになっているお店だと、気持ちよく選べないし店の雰囲気もダサくなるしね。
工場長西村豪庸
例えば、おしゃれなインテリアショップが、売上が下がってもいいから、たくさんの防犯カメラと鏡を取り付けて「万引きは見つけ次第すみやかに警察に届けます」みたいな張り紙をしたとします。
でも
「店内をダサくしてまで、万引きを防いだほうがコスト的に安いのか?」
って言ったら、違うじゃないですか。
万引き率は、接客の良さに反比例する
工場長西村豪庸
万引き率って、接客の良さに反比例するんです。
仮に、やまださんが万引きをしようとしても「さすがにヒデちゃんの店だからな」って思って、多分うちの店を選ぶことはないじゃないですか。
要するに、接客が良くてフレンドリーで「こいつから万引きするのはちょっとな…」って思わせたら勝ちなんですよ。
でも、それはコストがかかっていないんじゃなくて、啓蒙(けいもう)コストや教育コスト、人件費がかかっているじゃないですか。
「コストをかけずに万引きを減らすことは無理」っていうのは、こういった目に見えないコストがあるからなんです。
商品単価や利益率によって対策は変わりますけど、例えば高級価格帯に振ってるおしゃれなショップなら、そういうフレンドリーな接客のかわりにドアマンを1人雇って、万引きを抑止しているわけです。
ナレーターやまだひさし
加えて、普段からお客さんの名前を呼んで接客をするとか、お店側がお客さんを覚えている空気を出しておけば、なかなか万引き行為には及ばないでしょうしね。
完璧にコスト0で万引きを抑止することは不可能だけど、防犯設備の導入以外にも抑止できる方法はあるし、方法によってはホスピタリティ面も含めて強化できて、お店の雰囲気を悪くせずに万引きを抑止することができるということですね。
工場長西村豪庸
そうです。
だから、どの防犯対策が一番自分の店に合っているかじゃないですか?
例えば本屋なら、店内がダサくなってもいいから、張り紙をしまくるなり、ダミーでもいいから防犯カメラを設置するなりして「万引きをしたらちゃんと警察を呼ぶよ」ってアピールしたほうが、現実的じゃないですか。
来店した客全員に
「やまだ様、西村様、今日は、どんな本をお探しで」
「うるせえな、『デラべっぴん』だよ」
って言うわけにもいかないですし。
ナレーターやまだひさし
「言いたくないよ!」てなりますね 笑
万引き対策は、防犯設備などの機械に頼る以外にも、方法があるんですね。
食い逃げを防止するには
ナレーターやまだひさし
ヒデちゃんが今までやってきたお店で、万引きや食い逃げの被害に遭ったことはありますか?
工場長西村豪庸
昔、飲食店経営をガーってやっていたときに、食い逃げされたことは1回ありましたね。
ナレーターやまだひさし
そのときは、警察には届けなかったんですか?
工場長西村豪庸
届けてないですね。
居酒屋だったんですけど、学生4人組がトイレや電話のために何度も外に出ていて、気がついたら1人も居なかったんですよね 笑
1人客とかだと気になるけど「4人のうちの2人が外に出て、2人は残ってて…」って、入れ替わり立ち替わりされると分からないですよね。
ナレーターやまだひさし
そうですよね、1つのテーブルだけ集中して見ているわけにもいかないし。
工場長西村豪庸
まあまあ忙しい店でしたしね。
「もう1回戻ってくんのかな」とか思うじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
食い逃げされたあとは、何か対策をしたんですか?
工場長西村豪庸
「気を付けろ」としか言わなかった気がします 笑
ナレーターやまだひさし
食い逃げもそんなに多いわけでもないだろうしね。
僕はもう時効だと思っているので言いますけど、渋谷のセンター街にあった今はもう閉店してしまったお店で、食い逃げしたことあります。
工場長西村豪庸
いくつのときですか?
50歳のときとか、言わないでくださいね 笑
ナレーターやまだひさし
最近過ぎますね、それ 笑
僕が21歳のときに、そそのかされてやってしまったんですけど、みんな食い逃げしてしまうようなお店の構造になっているんです。
焼き肉食べ放題のレストランだったんですが、2階には客席と、バイキング形式に並べられた食材があって、レジは3階にあるんです。
おかしくないですか?
誰がわざわざ会計のために3階に上がるねん 笑
工場長西村豪庸
アハハ! 嘘でしょ 笑
ナレーターやまだひさし
慎重派な俺でも「これは行けるかも」って思いましたよ 笑
ウナギの寝床みたいな細い物件で、2階に客席、3階にレジと少しだけ客席があるんです。
多分会計を1フロアにまとめたかったんでしょうね。
「レジは上」って矢印が書いてあったんですけど
「やまだ、見てみろ。レジ3階なんだぜ。食ったら下に降りるから」
「まじすか先輩、そりゃそうですよね 」
っつって 笑
工場長西村豪庸
逆っすね、2階をレジにしなきゃ 笑
ナレーターやまだひさし
そのお店、すぐ潰れてました 笑
お店の構造の関係なども、もちろんあるんでしょうけど、まずは人間の行動パターンをある程度読まないといけないですよね。
リアル店舗を「広告費」と割り切っているお店
ナレーターやまだひさし
万引きを防止していくために、今後は本屋さんなんかも、自動販売機型になっていっちゃうんじゃないでしょうか。
工場長西村豪庸
まあそもそも、どんどん電子出版とかアマゾン・ゴーみたいになってきてるしね。
ナレーターやまだひさし
でも、蔦屋書店みたいな大きいところは、未だに図書館並のスペースで普通に読ませてますよね。
きっと万引き被害も大きいと思うんです。
工場長西村豪庸
だからアホみたいに赤字ですよね。
蔦屋はどっちかって言うと、リアル店舗を広告費と割り切っているんだと思いますよ。
ナレーターやまだひさし
人が多くて、立地の良い場所に出店してますからね。
あのお店の赤字は当然、全部はカバーできないでしょうね。
工場長西村豪庸
無理っすよ。
備品の盗難にはどのように対処するべきか
ナレーターやまだひさし
昔、ラブホテルで中国人のお客さんが、テレビとかを持って帰ってしまうから、エレベーターに仕掛けを作ったって聞きましたね。
エレベーターの重量がわかるようになっていて、最初に405号室の2人が入った時が100キロで、帰りが120キロになってたら、絶対におかしいって気づくようになっているみたいです。
工場長西村豪庸
ラブホテルに限らず、今でもいくつかのシティホテルでは「申し訳ないけれど、この国のお客さんのときは、これを部屋から撤去する」って決まってるホテルもありますよ。
持ってっちゃうんだもん。
ナレーターやまだひさし
僕、最近飛行機での移動が多くて、シャワー付きのラウンジを使う時があるんですけど、この間ラウンジに行ったら、ダイソンだったはずのドライヤーがパナソニックのものになっていたんです。
スタッフの方に聞いたら、ダイソンのドライヤーのケーブルを切って、根こそぎ持ってかれちゃったらしいんですよ。
「すいません、あの部屋ダイソン盗られたんです」って、悲しそうに言ってました。
ラウンジって、航空券を預けるから名前もわかっているはずなのに、それでも盗む人がいるんですね。
「俺が盗んだ証拠を出せ」なんて言われたら、やっぱり難しいんですかね。
工場長西村豪庸
現行犯で捕まえないと、難しいですよね。
「シャワールームにはカメラはないだろうし、カメラがあったら、それはそれで文句も言えるだろうし」って考えたんでしょうね。
ナレーターやまだひさし
ラウンジで盗んだってことは、ケーブルの切れたダイソンを、そのままカバンに入れて機内に持ち込むわけでしょ?
荷物チェックが終わってるから、しょうがないのかもしれないですけど、なんとか止められる方法はないんですかね。
工場長西村豪庸
帰って来る時に
「お客様、このコードの切れたダイソンは、なんでございますか」
って空港で言うぐらいしかないんじゃないですかね。
ナレーターやまだひさし
「切れちゃったんだよ」って言われちゃったら、どうしようもないですからね。
中間価格帯のお店は、万引き対策が難しい
ナレーターやまだひさし
結局、コスト0で万引き防止は無理だから、どこにコストかけるかが重要ということですね。
ヒデちゃんが言ってくれたように、防犯設備で万引きを防ぐより、ホスピタリティにコストをかけて、より良い接客をするほうが、万引き防止の未来は感じますね。
がんじがらめにしちゃったら、最終的には全部自動販売ってことになりそうでしょ。
工場長西村豪庸
ホスピタリティにコストをかけるってことは、自動的に高級業態をやるってことになりますね。
高級業態のお店ならホスピタリティの強化、低価格帯のお店なら自動販売やAIにシフトできますけど、どちらにも振り切れていない中間価格帯のお店の万引き対策は難しいですよね。
中間価格帯だと、ぶっきらぼうな接客もできないし、機械化をフルでやれるほど薄利多売にも振れないし。
ナレーターやまだひさし
海外だと、大きなバッグや他店の商品が入ったショッピングバッグの持ち込みを禁止していて、手荷物を全部預かるなどの対策をしていますけど、日本ではあまりやらないですよね。
工場長西村豪庸
やっぱり、文化的に厳しいんじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
預けたものが、なくなってしまうこともありますからね。
工場長西村豪庸
別に誰とは言いませんが、どこかの故・スカルノ大統領の第三夫人だった方が
「ホテルのクロークにコートを預けたら破られた」
って言って、訴訟を起こしてましたよね。
ナレーターやまだひさし
結局、自分で踏んづけて破けてたらしいですね。
工場長西村豪庸
ちゃんとカメラがあって良かったですよね。
ナレーターやまだひさし
カメラは嘘をつかないから、やっぱりダミーじゃないちゃんとしたカメラをつけといたほうがいいですね。
最近はあおり運転なんかもあって、ドライブレコーダーもつけておいたほうがいい時代ですし、カメラがないとこっちの主張もできなくなりますしね。
工場長西村豪庸
自分が正しいと思ってるやつは、めんどくさいですしね。
ナレーターやまだひさし
みなさん、万引きはだめですよ。
3階にレジがあるからって、食い逃げも本当はやっちゃいけないんだからね。
この番組聞いていて、2階で飯を食えて3階にレジがある店を知っている方がいたら、ちょっと行ってみるので教えてください。
工場長西村豪庸
だとしたら、そこは先に会計しましょう。
工場長西村豪庸
ありがとうございました。