価値をいじれた方がビジネスって上手くいく
読むポッドキャスト 第20回「西村豪庸の『社長工場』」
- ずーっとセールならずーっとセールでいい
- 在庫は解約時期を自分で決められない定期預金みたいなもの
- 女の子はひたすらホットペッパージャーニーをしている
- 価格と価値の不等号を成立させるために、1万円札を3000円で売れ!
- 服自体を売るのではなく付加価値を売る
- バイク雑誌の表紙で水着のお姉ちゃんがバイクにまたがっている理由
ナレーターやまだひさし
西村 豪庸(ひでのぶ) の社長工場!!
こんにちは、やまだひさしです!
ポッドキャスト番組「西村豪庸の『社長工場』」では、インスタイルグループの代表を務める、経営コンサルタントの西村豪庸さんが、ビジネス・経営に関することを独自の視点で解説していきます。
西村さん本日もよろしくお願いします!
工場長西村豪庸
お願いします。
ナレーターやまだひさし
世の中、クリスマス・イブでございます。
この時期だと世の中は、年末セール的なことをやるんですよ。
ということで、今回のテーマは「セール販売戦略は有効なのか」
ショップ経営者の方が、このPodcastを聞いているかもしれませんが、この時期って “右へならえ” で、クリスマスセールや年末セール、初売りの福袋を作ったりしている方が多くて、セールで売上は上がると思うんですけど、セールをすることは企業にとっていいことなのか。
西村さんもアパレルとかやられていて、例えば自分のグループ会社では、この時期はセールしますか?
工場長西村豪庸
するでしょうね。
でも、将来的にはセールをなくしていきたいんですよね。
ナレーターやまだひさし
あっ、そうですか。
でも、いっぱいある在庫を一気にはけられるっていう点ではメリットですよね?
工場長西村豪庸
それも理由だけど、アメリカなんかは1年の半分くらいの消費がクリスマスで、その商戦に向けてサンクスギビングが終わったあたりから企業は全力を出してくるんですけど。
ナレーターやまだひさし
みんな勝負時なわけですね。
工場長西村豪庸
それに乗らないのもおかしいので、セールをやるんだと思うんですけど。
ずーっとセールならずーっとセールでいい
工場長西村豪庸
そもそも、ずーっとセールならずーっとセールでいいんですよ!
ナレーターやまだひさし
いやいや! ダメです 笑
ずっとセールって、ずっと安いってことでしょ?
僕らにとってはありがたいんですけど、会社は大変じゃないですか!
工場長西村豪庸
サカゼン、ゼンモールの
閉店セール → 開店セール
開店セール → 閉店セール
みたいな 笑
ナレーターやまだひさし
あいつら閉店セールばっかしてますよね 笑
工場長西村豪庸
あれはあれで良くてって言ったらおかしいけど 笑
もうそれがデフォルトじゃないっすか。
なんかセールが嫌いなんですよね…。
ナレーターやまだひさし
ピンとこない理由が、西村さんの中であるんですか?
工場長西村豪庸
買ったものがセールになってるの、なんか嫌じゃないですか?
ナレーターやまだひさし
分かるわぁ〜!
定価で買ったものが次の日にセールで売ってたら、すごい損した気分になる。
工場長西村豪庸
俺は友達と喧嘩するとムカついて、「うっせー、バーカ! お前の買った服、明日からセールになれ!」とか悪口でよく言いますからね 笑
ナレーターやまだひさし
ハハハハハ!
それボディブロー! そっちの方がヘコむ。
工場長西村豪庸
「明日からお前の服、親友と丸かぶりしろ!」みたいな 笑
ナレーターやまだひさし
やだやだ〜。
こっちは結構な金をかけて買ったのに親友は安く買ってて 笑
工場長西村豪庸
「お前の12万のコートが6万になれ!」みたいな 笑
ナレーターやまだひさし
確かに、定価で買ってる人にとったら、すごく不機嫌になるし、ブランドへの信用も下がるね。
工場長西村豪庸
そうなんですよね。
チャリに乗ってるときは、
「車危ねーな、ムカつく!」
って思うし、車に乗ってるときは、
「チャリ危ねーな、ムカつく!」
って思うし、本当に自分勝手な生き物でございます笑
ナレーターやまだひさし
立場が変われば途端にね 笑
安く買ってた人にとってはラッキーって思うんだけど、高く買った途端にふてくされるのね。
その差異が出るようならセールはしない方がいいと。
工場長西村豪庸
全部分かってりゃいいんですよ。
「どうせ来週から、また閉店セールだろ」
「あと2分くらいで、どうせ水戸黄門様が印籠を出すんでしょ。」
「どうせあと1分くらいで、カラータイマーが鳴るんでしょ。」
「このスーパーは、18時から30円引きのシールが貼られるんでしょ」みたいな 笑
そしたら店の前で待つって話で。
ナレーターやまだひさし
こっちは、値引きシールが貼られるのを分かってるもんね。
工場長西村豪庸
予定調和になってくれるなら別にいいんですよ。
その分、買い控えされることも計算するし。
ナレーターやまだひさし
それでも定価で買う人もいるし、それはそれぞれで、と。
工場長西村豪庸
セールをやる気持ちも分かりますけど、同じものが1日で一気に安くなるのって、あんまり好きじゃないんですよね。
在庫は解約時期を自分で決められない定期預金みたいなもの
工場長西村豪庸
『社長工場』ですから、いきなり会計的な話をすると、在庫って決算書の資産の部に載るんで、例えるなら解約時期を自分で決められない定期預金みたいなものなんですよ。
ナレーターやまだひさし
はぁ〜、面白い。
工場長西村豪庸
現金だったらそのまま使えますけど、物になっちゃってるから、その解約時期ってお客さんしか決めてくれないんですよね。
もともと資産の部にあった現金が、在庫という名前に変わるわけじゃないですか。
それが飛ぶように売れていれば、すぐまた現金に変わって、また仕入れして、また在庫になるっていうサイクルが早いわけですけど。
それが不良在庫とか過剰在庫になって寝ると、そのお金は自分じゃなかなか解約できない定期預金と一緒じゃないですか。
ナレーターやまだひさし
うわぁ〜! そうね。
工場長西村豪庸
だから解約を少しでもするために、セールがあるわけですよね。
ナレーターやまだひさし
早めたいというか、現金化したいから。
工場長西村豪庸
手形の割引みたいに、満額じゃなく8割で割り引くというか、今は金がないから、額面10万円の手形を8万円で買ってくれみたいな。
それがある意味セールの正体じゃないですか。
ナレーターやまだひさし
分かりやすい! 半分でもいいから現金化したいんだ!
工場長西村豪庸
このまま在庫で積んでても、アパレルだったら、来年は絶対に流行んねーんだもん!
ナレーターやまだひさし
今後も買われることがないのは目に見えてると。
工場長西村豪庸
飲食店じゃないから腐ることはないんだけど、実質この在庫は腐ってんのと一緒。
ナレーターやまだひさし
値段を下げない限りは無理だと。
工場長西村豪庸
アパレルだとしたら…
自分の店では70枚しか消費されないのが分かってる
↓
ミニマムロットが100枚じゃないと作れない
↓
仕方なく100枚仕入れる
↓
案の定、30枚残った
↓
これが積み重なっていって300枚ある…
これは福袋になりますよね…?
セールになりますよね…?
ナレーターやまだひさし
そうかぁ…。
詰め込んででも、さばきたい。
工場長西村豪庸
そういうことまで全部分かってるアパレルのプロや超オシャレさんは、残ってるものとかには目もくれず、夏に秋冬の立ち上がりのものを、ちゃんと買っていきますよね。
でも、さっきのチャリンコと車じゃないですけど、会社の裏側でそういうことが起こってると、解約できない定期預金がちょっとずつ積み立てられていくわけですよ。
ナレーターやまだひさし
セールをする選択肢しかないところまで、きちゃってると。
工場長西村豪庸
きちゃってるところが多いと思うんです。
しないに越したことはないっていうのは、6万円で買ったものが3万円になったり、12万円で買ったものが6万円になったりって、やっぱりいい気はしないし、次はセールで買おうかなってなっちゃうじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
悪循環になりかねない。
工場長西村豪庸
基本的にはセールって自分の会社では好きじゃなくて。
セールが安く感じてくれるならいいけど、通常価格が高く感じるっていうか。
ナレーターやまだひさし
そうか。
それってリスクですよね。
女の子はひたすらホットペッパージャーニーをしている
工場長西村豪庸
美容系でいうと、女の子って得意げに
「あたし、ここ何年か髪なんて定価で切ったことないよ」
って言って、ホットペッパージャーニーをしてる子が多いんですよ。
ナレーターやまだひさし
いろんなクーポンがあるから。
工場長西村豪庸
店側は安くでもいいから、まずは来てもらうためにクーポンを発行して、そこから続けてもらおうと思うけど、女の子はひたすらジャーニーをしてるわけで。
ナレーターやまだひさし
違う店でもクーポンを使って永遠に割引でしか行かない。
これ、怖いですね。
工場長西村豪庸
セールにしろクーポンにしろ全部一緒で、そうなると、やっぱりキツいですよね。
価格と価値の不等号を成立させるために、1万円札を3000円で売れ!
工場長西村豪庸
ビジネスって価格と価値の不等号を成立させることがポイントで、うちのグループ社内のハウスルールでは、1万円札を3000円で売れっていう言い方をしてるんですけど…。
要は顧客が感じる価値よりも価格が低いと思ったときに
「えっ、これ◯◯にしては安くない?」
って言って買っていくわけじゃないですか。
だから1000円でも高いと感じるものもあれば、10万円でも安いと感じるものもある。
ナレーターやまだひさし
単に、高いか安いかじゃなくてね。
工場長西村豪庸
10万円ぐらいしそうなコートが3万円なら買うし。
ナレーターやまだひさし
7万円の得をした気分になって買うね。
工場長西村豪庸
3万円ぐらいだと思ったコートが、10万円だったときには買わないじゃないですか。
大体の企業は、この価格と価値の不等号を成立させるときに、いじるのが簡単なんで価格をいじるんですよ。
ナレーターやまだひさし
ちょっと安めにしておけって調整して。
工場長西村豪庸
1万円の価値があると思ってもらってるコートの不等号を成立させるために、9000円もしくは8000円とか7000円にしますよね。
これがセールの正体。
1万円のコートを1万5千円だと思ってもらえるような、付加価値をつける努力をしないと。
ナレーターやまだひさし
なるほど。
工場長西村豪庸
だってバツを付けてゼロを1個消すか、半額って書くだけでいいんで、価格をいじる方が100倍簡単じゃないですか。
価値をいじるのって大変ですけど、やっぱり価値をいじれた方がビジネスって上手くいくし。
ナレーターやまだひさし
そうか。
新人のタレントが、いろんなスキルを磨いていけばギャラが上がるのと一緒だね。
工場長西村豪庸
もしくは値段設定がそのままでも売れるけど、新人タレントのギャラが5万円で売れなくて、3万円、2万円、1万円って下げていったら、要らねーよってなるじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
そのタレントは売れることはないですね…。
そんなことよりも、英会話やダンスのスキルを磨いて価値を高めていくと、勝手にギャラも…
工場長西村豪庸
それ、1人でジャカルタに行って、ちゃんとインドネシア語が喋れるようになった人の話をしてますか?笑
ナレーターやまだひさし
その通りです 笑
あの子はすごいよ!
日本にいたときはセンターじゃなかったもん。
工場長西村豪庸
ねー 笑
工場長西村豪庸
ハハハ
ナレーターやまだひさし
商品も同じで、価値を高めていけば…
工場長西村豪庸
やっぱり価値を高める方がいいですよね。
僕が途中からM&Aした企業って、まだセールしてるんですけど、将来的には、うちのグループ全社がセールをしてない方が本当は良いなって思ってるのは、そういう理由なんですよね。
全員が価格じゃなくて価値をいじくれている方がいいなと思ってて。
ナレーターやまだひさし
信用度もそっちの方が上がるだろうし。
服自体を売るのではなく付加価値を売る
工場長西村豪庸
本当に何度も繰り返すけど、価格をいじるっていうのは数字を書き換えるだけなんで簡単なんですよ!
これまで100%セールしていたのを、90%、80%、70%って、ゆっくりセールの割合を減らしていくだけでも違うと思うし、金額、期間、在庫量、いろんな調整ができると思うんですよね。
「できることなら、なくしたい」って言ってるだけじゃなくて、いつまでに現状の半分にする、3割にする、ゼロにするっていうのを計画する必要があって。
それが売上比率なのか、在庫比率なのか、割引比率なのか、いろんなやり方があると思うんですよ。
服屋に来るお客さんは、要らない服とか似合わない服は買いたくないのに、価格をいじるって、服を売りつけるに近いですよね。
ナレーターやまだひさし
別に安いから買ってるわけじゃないもんね。
工場長西村豪庸
だけど変な話、お店の人は過剰在庫になってたりキャリーになってたら、売りつけたいんですよね。
ナレーターやまだひさし
とにかく買わせたい 笑
工場長西村豪庸
でも僕は、それは間違ってると思ってて、奥にあるのは付加価値であって、服自体を売るっていうより、ちゃんと価値が売れているか。
この服を着たら
「彼女ができますかね?」
「モテますかね?」
「オシャレって言われますかね?」
でもいいし、楽しいでもいいし、その奥にある価値を売ってるというか。
ナレーターやまだひさし
その店だから買う、その人だから買う、ってなって、そこに来るのがいいと。
工場長西村豪庸
アパレルだろうが飲食だろうがすべて一緒で、そのお客さんに、どこまで貢献できるかだと思うんすよね。
イソップ童話でしたっけ?
レンガを積む少年の話で、レンガを積んでる少年が3人いて、旅人が一人ひとりに聞いていくんですよ。
1人目はつまんなそうに積んでるから
「何してるの?」
って聞いたら
「見りゃ分かんだろーがよ、レンガ積んでんだよ…怒」
って言われて。
もうしばらく行って2人目に聞いたら
「見りゃ分かんだろーがよ、壁作ってんだよ、ボケ!怒」
って言われて。
3人目を見たらスゲー輝かしい目でレンガ積んでるから
「どうしたの?」
って聞いたら
「おっさん見りゃ分かんだろ! 世界一の教会を作ってんだよ☆」
って言われたっていう。
ナレーターやまだひさし
へぇ〜
工場長西村豪庸
やってることはまったく一緒だけど、ビジョンが見えてるか見えてないかで、奥にあるのが何かだと思うんすよ。
「見れば分かるでしょ、服を売ってるんだよ」
「皿を洗ってるんだよ」
「飯を出してるんだよ」
っていうのは、お客さんからしても全然嬉しくない。
ナレーターやまだひさし
魅力的じゃない。
次は店に来ないですよね。
工場長西村豪庸
やっぱりそこにストーリーがあるというか。
お客さんも
「服を買ってるんじゃない」
「飯を買ってるんじゃない」
「家を買ってるんじゃない」
極論、投資用不動産を買ってる人が投資用不動産を買うのが目的かっていったら違くて、投資用不動産から出るキャッシュフローを買ってるし、投資用不動産から出るキャッシュフローすら買ってなくて、出たお金で買える愛人を買ってるし。
例えばね 笑
ナレーターやまだひさし
ハハハ!
工場長西村豪庸
恋人との楽しい生活や息子の進学費用を買ってて、投資用不動産を買ってるんじゃない。
ナレーターやまだひさし
その先だもんね。
規模感は違うけど、服も一緒で…
工場長西村豪庸
例えば、シャツを1枚買ってるんじゃなくて、“週末の楽しいデート” を買ってるわけじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
「この服かっこいいね」
って彼女に言われたいっていうのも加味されてたりするね。
バイク雑誌の表紙で水着のお姉ちゃんがバイクにまたがっている理由
工場長西村豪庸
いまだにバイク雑誌の表紙は、春夏秋冬バイクに水着のお姉ちゃんが、またがってるじゃないですか。
結局、かっこいいバイクを買ってるんじゃなくて
「これ乗ったら彼女できるナリ♪」
「水着の金髪のお姉ちゃんが付いてくるナリ♪」
「もしかしたらワンチャンあるナリ♪」
って思ってるんですよ。
それが奥にある狙い、願望というか、本当のニーズ、ウォンツじゃないですか。
それこそ『ドリルを売るには穴を売れ』じゃないですけど、ドリルが欲しいんじゃなくて、穴を空けたいからドリルを買ってるわけじゃないですか。
ナレーターやまだひさし
さっき言ってたホットペッパージャーニーっていうのも、“この美容師さんに切ってもらいたい” っていう付加価値があれば、クーポンは使わずに、もう1回来るわけですよね。
それがなくて価格競争だけをしていたら、来なくなるのは当然だと。
工場長西村豪庸
だって「吉野家」ですら、築地市場限定で、油だくでしたっけ?
ナレーターやまだひさし
つゆだくの他にも結構あるんですよね。
工場長西村豪庸
築地の市場が閉まるときに、すごい行列ができるほど名残を惜しんだんですよね?
チェーン店の吉野家ですら、付加価値を付け、独自性が作られてるんですよ。
ナレーターやまだひさし
「富士そば」も、“あの店にしかないラーメン” とかあるんですよ!
工場長西村豪庸
もっと言ったら、200〜300人の好みを覚えている富士そばの店員さんとかいるんですよ!
ナレーターやまだひさし
何も注文しなくても顔だけでパッと出してくれるんだ。
工場長西村豪庸
食券を渡されるときにはもう、そば茹で上がってんですよ!
天ぷら染みてんすよ!
天ぷら染み染みがいいのか、カラッとしてた方がいいのかで使い分けていて、同じ金額のそばと天ぷらでも、その人は付加価値を付けてるんすよ。
その人がいなくなったら、その富士そばの売上は絶対に下がるんですよ…。
ナレーターやまだひさし
下がる下がる!
行かなくなる!
工場長西村豪庸
価格をいじるのは本当に簡単で、財務データだけをいじくって、在庫を減らして現金を増やすのは簡単だし、セールはやらないに越したことはないって話ですけど、いろんなものが複合的に絡み合ってますよね。
ナレーターやまだひさし
そこまで考えてセールをした方がいいってことですよね。
その場だけ財務が良くなったとしても…
工場長西村豪庸
ダメだし。
だからって、やらずに逼迫(ひっぱく) してても良くないし。
ナレーターやまだひさし
バランスを考えて行動すべきですね。
工場長西村豪庸
やっぱり意思決定の方法だと思いますね。
工場長西村豪庸
ありがとうございました。